ハナチルサト

橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ

丸ちゃん

Twitterで時々登場する我が子、子うさぎ(私のTwitterのアイコンが雑煮をすするうさぎなので)実は私よりも関ジャニ∞ファン歴が少し長い。
ちなみにマルターである。
今日はそんなマルター子うさぎが今よりもっと小さかった頃の話をしたいと思う。


子うさぎがまだヨチヨチ歩きで言葉も辿々しい頃、私たち家族は住み慣れた土地を離れ、縁もゆかりもない土地へと引っ越してきた。
何もかもがリセットである。
それに加えて、幼児特有の反抗期に差し掛かった子うさぎに私は頭を悩ませた。
もともと気の強い子だったので覚悟はしていたけれどとにかく凄まじかった。
癇癪を起こしてお茶が入ったコップを投げつけられたり(冷めてて良かった)、ご飯が入ったお茶碗を投げつけられたり(ちなみに納豆ご飯。地獄を見た)1時間以上、床を転げ回って泣き喚くなど日常茶飯事だった。
買い物に行っても気に入らないことがあると床に寝そべって泣き喚くので、居合わせた人に「なんて気の強い子」と言われたこともあるし、舌打ちをされたことも1度や2度ではなかったし「自分の子なのに言うことを聞かせられないのか」と怒鳴られたこともある。
逃げるように店の外に出て、のけぞって泣き続ける子うさぎを抱きしめて、トボトボと家に帰った。
苦しくて、辛くて、寂しくて、孤独で、涙がポロポロとこぼれて、そんな自分が情けなくて惨めだった。
子うさぎ自身も自分の感情を持て余しているようで、それが可哀想で仕方なかったし、私がお母さんじゃなかったらこの子はもっと穏やかな毎日を過ごせるのではないか…とも思った。
振り返れば完全に育児ノイローゼである。


そんな時私たちは運命の男たちに出会う。
関ジャニ∞である。


新天地でようやくできた友人に半ば強引に渡された円盤を家に持ち帰ってすぐ子うさぎが言った
「ママ、みる」
「DVD?観たいの?」
「みる」
ディスクをレコーダーに入れているのを見ながら、こうさぎが言った
「みかん、みたいの」
「みかん?食べたいの?」
イライラしたような顔で子うさぎが首を振る。
また癇癪を起こすのかと身構えたとき、映像が始まった。
「ちがう、いや」
「見ないの?」
子うさぎが怒って地団駄を踏む。
「イヤ!みる!」
そういえば友人の家で、楽しそうに見ていた曲があったことを思い出して、うろ覚えの歌詞をスマホで検索をかける。
『TAKOYAKI in my heart』
オレンジの衣装を纏った丸ちゃんが画面に映った瞬間子うさぎがぴょんぴょん飛び跳ねる。
『ママ、みかん、みかん』
「丸ちゃん好きなの?」
「まるちゃん?」
「丸ちゃんっていうお名前なんだよ」
「みかん、丸ちゃん」
それから子うさぎは丸ちゃんに夢中になった。
鼻歌は
「おーさかーおーさかー」
「わてらようきなかんさいじん!」
外でも大きな声で歌うのでちょっと恥ずかしかったが癇癪を起こすより100倍マシである。
おもちゃも、折り紙も、お風呂上がりのタオルも、子ウサギの選ぶものは全てオレンジ色になった。
しばらくの間オレンジ色は子うさぎの中で「まるちゃん」という名称になった。
そんな子うさぎに付き合っているうちに、私もいつの間にか関ジャニ∞に、安田くんに夢中になった。
2人で関ジャニ∞の歌を歌いながらお散歩をした。
そうこうしているうちにセブンイレブン関ジャニ∞コラボが始まる。
セブンイレブンの前を通るたびに「まるちゃんのお店」と言って、関ジャニ∞のポスターを見に行くのでそれはそれで大変だったけれど、楽しそうな子うさぎの顔を見るのが嬉しくて、キャンペーン中はしょっちゅうセブンイレブンに行った。
キャンペーンが終わった後、
「まるちゃんのうどんほしい」
としばらくシクシク泣いていたけれど以前のような癇癪を起こすことは少しずつなくなってきた。
嫌いな食べ物も丸ちゃんが好きなら食べる。
丸ちゃんの写真を小さなカバンに忍ばせてお出かけする。
丸ちゃんの写真を抱きしめて眠る。
癇癪を起こしかけても
「丸ちゃんはニコニコした子うさぎのことが好きなんじゃない?」

と声をかけるとピタリとおさまった。


お遊戯会で、運動会で、お楽しみ会で、好きな色の衣装を選択するとき、子うさぎは必ずオレンジ色のものを選ぶ。お絵描きをする画用紙も。クレヨンもオレンジ色の減りが早い。折り紙だってオレンジ色がすぐなくなる。
オレンジは丸ちゃんの色。
子うさぎの大好きな人の色。
「まるちゃんのオレンジがあればがんばれるの!」と子うさぎは笑う。
恥ずかしがり屋で人見知りで、ちょっぴり頑固な子うさぎ。そんな子うさぎを丸ちゃんはいつでも支えてくれている。


あの頃、私も子うさぎもかなりの息詰まりを感じていたけど、丸ちゃんとの出会いは、私たち母子に優しい風を吹かせてくれた。
丸ちゃん、ありがとう。
コロナ禍と言われる時代が終わったら、必ず子うさぎと一緒にコンサートに行きます。
子うさぎは恥ずかしがり屋なので、無表情で丸ちゃんのことを見ているかもしれないけれど、心の中ではきっと「大好き」と叫んでいると思います。
丸ちゃんの笑顔が、私たち母子を救いました。
丸ちゃん、アイドルに、関ジャニ∞になってくれてありがとう。

丸ちゃん、38歳のお誕生日おめでとう。

生まれてきてくれてありがとう。