ハナチルサト

橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ

それでもわたしはあなたを推す

その日が来るのが、怖いような待ち遠しいなような複雑な思いが絡み合って、整理がつかないまま9月24日を迎えた。

想像していたよりもずっとずっと小さな冊子から開いた。青みがかった曇天のような色。すぐに視界が滲んでぼやけたので読み終えるまでとても時間がかかった。
ハードカバーだと思い込んでいた表紙は実際に手に取ると柔らかくてそっとはがして隅々までみた。
ゆっくりゆっくり丁寧にページをくりながら写真を見た。全て見終わって表紙の安田くんの頬をそっと撫でてから写真集を胸に抱きしめて、それからしばらくその場から動けなかった。


安田くんの訴えたいもの、安田くんが見せたいもの全て詰めこまれているのに余計なものはすっかり削ぎ落とされている。

安田くんはこれからどんどん彼自身がいらないと思ったものを削ぎ落としてありのままの自分をさらけ出していくのだろうか。

もしかしたら、その削ぎ落としていくものの中に私が愛したアイドル安田章大の一部分が含まれているのかもしれない。


安田くんとわたしは全く違うタイプの人間だ。

死生観もきっと全然違う。
かといって安田くんの表現したいものを間違っているとは思わないし、わたし自身の価値観も大切に持ち続けていたい。「同床異夢」という言葉がある。人は寝床を同じくしても決して同じ夢を見ることはできない、という意味だ。愛した人とも、家族とも、友人とも、どんなに物理的に近くにいても、全く同じ夢、同じ感覚で物事を見ることはできない。それは推しだって例外ではないのだ。


わたし自身の経験から思うことがあって、こういったジャンルの作品からはずっと一線を引いてきた。
写真集のテーマが明かされた時から覚悟を決めて手に取ったはずなのに、いざ実物を前にすると苦しくて、実は今でも少し苦しい。
けれども私にはこの写真集が必要だ。
安田くんが好きだから。
安田くんの経験値から生み出されたこの作品をどうしても見たかった。
たとえ安田くんと同じ景色を同じ感覚で見られなくても、安田くんのフィルターを通した景色を見てみたかった。
安田くんが見せてくれる景色、届けてくれる言葉はどれも新鮮でいつも感動と驚きをもたらしてくれるから。
これからもずっとずっと安田くんはわたしの大切な推しなのである。


安田くんへ
安田くん、写真集発売おめでとうございます。
あなたの想いは全てしっかり受け取らせてもらいました。
あなたのことを全て理解することはきっとできないし、もしかしたらあなたの表現したいものがわたしの方向性と違うことも今後あるかもしれない。

それでもわたしはあなたを推す。

あなたが願うように、あなたが志すように、この作品に勇気づけられ、生きる力を得る人達がきっといる。必ずいる。

その第一歩をあなたは踏み出した。
批判も誹謗中傷も受け入れる覚悟をしているというあなたはとても強い、だからこそ勝手に心配はしているけれど。
でもね、あなたのことを心から愛して応援している人たちをわたしはたくさん知っています。
きっと大丈夫。
きっとうまくいく。
あなたの進む道が優しく穏やかであることを心から願っています。

ただ一つわたしからのお願いも聞いてください。今の「安田章大」としての人生を幸せに生きてください。人の幸せは自分の幸せというあなたにならきっとわかってもらえると思いますが、あなたの幸せはわたしの幸せなのです。